当院の診療内容(2)
頭痛薬内服の方へ
患者さんが頭痛を訴えるとき、脳腫瘍や脳卒中の可能性も考えなければならないので慎重になります。臨床経過、神経学的症状や嘔気の有無などから、重症度を見極め脳外科等へ紹介すべきか考えます。その後、頭蓋内の血管拡張からくる片頭痛と、肩や頭部の筋緊張型頭痛かを鑑別します。両者の混合型もよくあります。片頭痛は放物線状に痛みが経過し比較的若い女性に多く見られます。筋緊張型頭痛は悪い姿勢やストレスなどが原因で更年期世代の女性に多い印象です。筋緊張型頭痛は肩こり体操など運動で動かすことで改善しますが、片頭痛はかえって痛くなります。両者は治療が異なることもあるため実際は難しいことも多いですがある程度の鑑別は大切です。高齢の方が片頭痛様の状態の時、年齢的にあまりあることではないので重症度を上げて診ています。
1)ロキソニン、カロナール
片頭痛と緊張型と両方に有効で最も一般的な鎮痛方法でしょう。妊娠中の方はロキソニン不可です。
2)ゾーミック、アマージ
イメージはデレッとして拡張した血管をシャキッと収縮させるトリプタン系の片頭痛薬です。1月に10回以上内服すると自分で治す力がなくなり医原性頭痛になるので10回以内です。一般的に放物線状の疼痛曲線の早い時期から内服しないと効かないのですが、ゾーミックはanytimeが売りで比較的痛くなってからも効くので、当院ではゾーミックを処方する機会が多いです。
3)ミグシス、デパケン、トリプタノール、インデラール
これらは保険適応の片頭痛予防薬です。元来、カルシウム拮抗剤、抗てんかん薬、抗うつ薬、βブロッカーという特徴を持ちます。私が出席した研究会では上記予防薬の有効性は10~20%といわれ、当院でも片頭痛の患者さんと相談の上、藁をもつかむ思いで予防薬処方していますが、有効な人は少数派です。でも、それぞれの薬の特徴を理解した上で試す価値はあります。
4)ミオナール、デパス
筋弛緩作用を持ち緊張型頭痛に適応です。ミオナールやテルネリンは1~2ヶ月くらいは良いのですが、効かなくなったり眠気やだるさのため続かないことが多いです。デパスは即効性がありミオナールやテルネリンより強力です。デパスは元々は抗不安薬であり止められなくなる依存性や、睡眠薬のように眠気を起こす可能性があり運転や仕事は注意となります。夜服用するとか、どうしてもの時は、0.5mgを半錠にして頓用です。
5)呉茱萸等、釣籐散
呉茱萸等は片頭痛、緊張型両方で頭痛一般に適応です。処方する機会は多いですが年余にわたり続くことはあまり経験ありません。釣籐散は年齢が比較的高く血圧高めの方で、はまると釣籐散により頭痛がなくなり長期的に続けている方がおられます。
6)五苓散、当帰芍薬散
両者とも水バランス調整に優れます。天気の変化による頭痛や二日酔いによる頭痛は五苓散が優れ、ホルモンバランスが悪く冷えやむくみなど見られる場合は利水剤ともいわれる当帰芍薬散が有効です。当帰芍薬散は、月経困難症、不妊症、習慣流産、更年期障害にとても力を発揮します。
7)アジョビ
最も新しく最も有効と考えられている1ヶ月に1回の片頭痛予防注射です。保険きいて1万円前後です。片頭痛の原因に深く関与しているとされるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に対して、アジョビが選択的に結合することで、三叉神経系の活性化を抑制する(片頭痛発作が起こることなどを抑える)と考えられています。20年前に作成されたイミグランのパンフレットにCGRPの記載を先日発見しました。つまりアジョビは20年の試練の後にようやく発売された薬と言って良いのではないでしょうか? これからの検討も必要で保険適応外ですが、ホットフラッシュなどの更年期障害へも有効ではないかと考えています。
現在のところ脳神経外科などの頭痛専門医のところでの注射となります。