当院の診療内容(2)
睡眠薬内服の方へ
睡眠障害は、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害に分けられます。睡眠障害治療の基本は、起床時間を一定にする、朝日を浴びる、運動をする、睡眠前のパソコン、携帯による光刺激、アルコール、タバコを避けるなどです。これらで不可の時に睡眠薬を処方しています。
1)デエビゴ、ベルソムラ
「覚醒のために必要なオレキシン受容体」の拮抗薬です。GABAに作用する従来の睡眠薬と違い、筋弛緩作用ないのでふらつかない転ばない、依存症になりにくい、呼吸抑制がない、緑内障に影響しない等が長所です。ベルソムラはREM睡眠を強くするため入眠には有利ですが悪い夢を見るということがあります。しかし最近ベルソムラがβアミロイド産生を抑制してアルツハイマーを予防するのではないかという研究がワシントン大学から出ています。デエビゴの方が睡眠効果は強く、中途覚醒に良いので当院ではデエビゴ処方することが多いです。
2)加味帰脾湯、酸棗仁湯
加味帰脾湯は、気がはれない、不安、神経的に疲れているときの不眠によく、1日3回食前に服用します。おそらくはメラトニンなどが増えて改善していくのでしょう。酸棗仁湯は、肉体的に疲れているときの不眠によく、就寝30分前に2包内服します。
3)ロゼレム
睡眠のためのホルモンであるメラトニン作用増強効果があります。穏やかで生理的な治療法でまずは試すべき治療法であると思います。しかしながら実際の効果は弱く、最初の段階でおすすめし難い点もありますが、継続されて自然な眠りを得られている方もいらっしゃいます。
4)マイスリー、ルネスタ
非ベンゾジアゼピン系で抑制系であるGABAの作用を強めます。ベンゾジアゼピン系に比較すると依存や耐性は少なく、なによりも眠りが深いです。年齢高くなると副作用として、寝ぼけやふらつき、転倒や骨折に注意です。マイスリーはマイスリープの略でよく処方されますし、ルネスタも更年期学会で有効性が発表されています。最初からデエビゴ、ベルソムラのケースは問題ありませんが、マイスリー、ルネスタからデエビゴ、ベルソムラへの乗り換えは難しいことが多いです。
5)ハルシオン、レンドルミン
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬で問題もあり歴史的には終わっているはずですが、実際には一定の患者さんからの支持があります。基本的に当院のような睡眠専門の病院ではないところでは処方しない方針です。ハルシオンは入眠効果に優れ、レンドルミンは癌を宣告された精神科医が一番内服した睡眠薬と言われたことがあります。
6)ホルモン補充療法(睡眠薬ではありませんが)
エストロゲンには睡眠改善効果があり、天然型黄体ホルモンにはGABA作用があります。したがって更年期障害で不眠な方はホルモン補充療法により睡眠改善効果が期待できます。