当院の診療内容(1)
2024/10/14
ホルモン補充療法の方へ
1)ホルモン補充療法は、ほてり、のぼせ等の更年期症状を改善します。
今まではホルモン補充療法が最も有効とされてきました。しかしながら、最近アメリカで認可された視床下部の神経伝達物質阻害薬であるFezolinetantはホットフラッシュにかなり有効なようです。すでにアメリカでは実用化され日本でも治験の段階にあるそうです。これは女性ホルモン剤ではありませんので内科、耳鼻科、精神科などでも処方可能と思われます。そうなるとホットフラッシュ治療のために婦人科受診の必要性は少なくなると予想されます。
2)ホルモン補充療法であれば、骨粗しょう症、萎縮性膣炎、脂質異常症、更年期うつ症状、お肌の不調、生活の質を改善する効果が期待できます。
ホルモン補充療法はほてりやのぼせ改善だけでなく総合的に女性を健康にする効果もあり、50歳代に5年以上のホルモン補充療法により20年後の死亡率が有意に減少したとアメリカでは報告されています。上記の視床下部の神経伝達物質阻害薬であるFezolinetantにこれらの効果を期待することは難しいと考えられます。
3)ホルモン補充療法においては、ジェルやパッチの経皮吸収エストロゲンと天然型プロゲステロンの組み合わせが最も安全な治療法とされています(日本女性医学学会)。
当院ではル・エストロジェルとエフメノによる連続療法を基本としております。ル・エストロジェルは東京医科歯科大学産婦人科で治験担当責任医師を担当して以来約30年の経験があります。経皮剤なので経口剤と比較し、肝初回通過効果がなく血栓症などの副作用が少ないとされます。入浴後に化粧品を塗る要領で両腕に塗布していただければ良いです。そのときに、「きれいに元気になれ」と願いを込めることが大切です。エフメノは天然型黄体ホルモンであり従来の合成型黄体ホルモンと比較して、有意に乳がんが増えることがないとされています。エフメノ連続法は周期法に比べGABAに一定して作用するので睡眠障害にはよろしいと考えています。不正出血という負の点もありますし、パッチ剤、経口剤、周期法、合成型黄体ホルモンがよろしいという方が一定数おられますので、適宜相談をして処方しております。
4)1年に1回子宮頸がんと体がんの検査、超音波検査、血液検査等が望ましいです。
市町村が行う対策型検診では2年ごとでよろしいのですが、ホルモン補充療法中は毎年が望ましいです。子宮内膜症や悪性腫瘍などで子宮卵巣などを切除されている方でもホルモン剤による影響を否定するために経膣エコーをおすすめします。
5)1年に1回の乳がん検診、マンモグラフィーや乳腺超音波検査を受けてほしいです。できれば、1ヶ月に1回乳房の自己検診もお願いします。
ホルモン補充療法により乳腺濃度が高くなるとされます。マンモグラフィーは2年に1度としても乳腺超音波検査は毎年受けることがおすすめです。特に高濃度乳腺の方は乳腺超音波検査が有効です。
6)まれに血栓症があるので、ふくらはぎのマッサージ、適度の水分摂取を心がけましょう。
長時間の正座や、エコノミークラス症候群になりそうなことは避けましょう。
7)ホルモン補充療法終了のタイミングは難しいですが、ご一緒によく相談して決めましょう。
ホルモン補充療法を中止しなければならない決められた年齢や治療期間はありません(ホルモン補充療法ガイドライン)。
65才以上でホルモン補充療法を継続されている方では、子宮体癌、卵巣癌、心疾患の有意な減少などが2024年のMenopauseという医学雑誌に報告されています。