当院の診療内容(1)
2023/06/11
脂質異常症の方へ
悪玉コレステロールLDLが高くても(140以上)、または善玉コレステロールHDLが低くても(40以下)脂質異常です。空腹時の中性脂肪が150以上も脂質異常です。脂質異常が続くと動脈硬化となり大切な血管が詰まってしまい脳梗塞、心筋梗塞になる可能性が高くなります。
女性の場合、閉経までは女性ホルモンのエストロゲンが 悪玉を抑え善玉を増やしています。したがって、閉経までは脳梗塞、心筋梗塞は女性のほうが圧倒的に少ないです。閉経後は男性に追いついてしまいます。女性が100歳まで元気に健康でいるためにはこの点はとても重要です。
HDL、LDL、中性脂肪の数値は、健康診断や一般血液検査の時にたいがい確認できます。これらの数値に異常がある場合には、年齢、性別、喫煙、血圧、HDL、LDL、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴の8項目を点数化して、低、中、高リスクと分類し、それぞれ脂質管理目標値が設定されます。(ガイドライン)
1) 食生活の改善
積極的に摂るべき食品として、ブロッコリー、にんじん、ごぼう、たけのこなどの野菜、わかめ、ひじき、昆布などの海藻、とうふ、あずき、枝豆などの豆類、しいたけ、しめじなどのキノコ類、こんにゃくなど食物繊維は腸管からのコレステロールの吸収を抑え、排泄を促進します。ほうれん草、かぼちゃ、ナッツ類、植物油などに含まれるビタミンEは動脈硬化を防ぐ働きがあります。
摂りすぎに注意すべき食品として、レバー、もつ、丸干し、しらす干しなど内臓含むもの、たらこ、すじこ、卵の黄身などもコレステロール多く含みます。バター、ラード、生クリーム、肉の脂身など動物性脂肪も要注意で、夕食の白米を減らすなどしてカロリーの摂りすぎに注意しましょう。
2) 運動量を増やす
ライフスタイルを変えるため何かアクションを起こさねば何も変わりません。まずは、1週間に3回以上、20分かけて心拍数が10%以上上昇するウオーキングを、大股で少し汗をかくくらいで頑張りましょう。ジム、ヨガ、その他のスポーツができればさらに良いです。6000歩以上が理想で、夏の暑い時は大きなショッピングモールを利用しましょう。
3) クレストール、メバロチン(スタチン)
食事、運動療法がうまくいかない方にとり最もメジャーな治療薬です。肝臓の酵素HMG-CoAに働いてLDL生合成を抑制します。同時に肝臓のLDL受容体を増加させ血液中から肝臓内へLDLを取り込み強力にLDLを低下させます。閉経後の方が、食事療法をしながらスタチンを継続服用して、コレステロールをきちんと下げると、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが年齢が上がるにつれて大きく下がることが、日本人8000名を対象とした大規模臨床試験で証明されています。副作用としては、まれにCPK上昇筋肉障害、茶褐色尿伴う腎機能障害、肝機能異常、HbA1c上昇などがあります。定期的な検査が必要です。
4) ゼチーア
スタチン不耐な時のお薬です。甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群があるとスタチン無効ですのでその場合は原疾患治療が優先です。ゼチーアは小腸からコレステロールが吸収されるトランスポーターを阻害することでコレステロールを吸収させない薬です。スタチン+ゼチーアまたはゼチーア単独で処方します。おそらく筋細胞内外でのコレステロール値の違いが引き金となって筋細胞破壊を引き起こすと考えられ、ゼチーアもスタチンもその副作用という点同じですが、ゼチーアのほうが筋肉障害は少ない印象です。ストロングスタチンに比較すると効果は弱いです。
5) ロトリガ、エパデール
ロトリガはオメガ3脂肪酸エチル粒状カプセルで、いわゆるお魚の油でEPA930mg+DHA750mg 含有です。エパデールはEPAのみで600mgを3回内服します。中性脂肪を下げることが主たる目的ですが、血小板凝集抑制作用があるため、血栓予防になりいわゆる血液さらさらの効果が期待できます。動脈硬化を予防するため、動脈硬化性認知症うつ病予防によいとされます。手術を含め出血傾向があるときは不可です。千葉の漁村で魚を食べる人に脳梗塞心筋梗塞が少ないこと、その食べてる量から千葉大の先生がEPA1800mgを見つけたそうです。低用量ピル、ホルモン補充療法など血栓症リスクを伴う治療において、脂質異常のある方の場合に、ロトリガやエパデールを併用すると血栓予防になりとても安心です。
6) ベザトール、パルモディア、リピディル
いずれも中性脂肪を主に下げる薬です。肝臓では遊離脂肪酸から中性脂肪が合成されるのを阻害し、血液中では中性脂肪から遊離脂肪酸への分解を促進し中性脂肪を下げます。約15年前にキッセイ薬品さんがベザトールを発売し、市販後調査ということで当院も協力しました。中性脂肪下げ、LDL下げ、HDL上げ、HbA1c下げ、脂肪肝を治しで夢のような薬の登場でした。パルモディアはその作用がさらに強力となり脂質代謝に関わる遺伝子発現にも関与します。2023年12月からは1日1回1錠の内服ですむようになります。中性脂肪値が400以上特に1000近い方もいますが、そうなると中性脂肪を下げるため膵臓内でアミラーゼやリパーゼが異常に活性化し膵臓を自家融解し急性膵炎から危篤状態になることもあります。リピディルはそのようなときに頼りになりますが、普段使いは他剤に比較し副作用も強く使い辛い印象があります。
これらの薬は2019年よりスタチンとの併用が禁忌から慎重投与になりましたが、クレアチニンなど少しでも高い人には横紋筋融解症が怖いので併用していません。
7) PCSK9阻害薬
家族性高コレステロール血症、冠動脈疾患の2次予防などに必要となり、当院では無理で高次医療機関にお願いしています。